実釣講座

 

仕掛けとタナの設定

 

■ 狙う魚種とサイズ

本来の釣りの面白さは、自分が狙った本命を釣り上げるところにある。だからこそ、事前の釣行計画が重要であり、釣果の殆どは計画の良し悪しで決まってしまう。

情報の少ない不慣れな釣り場では、狙った魚がほんとうに釣れるのかどうかわからないが、とにかく釣ろうとする魚種とサイズを特定して、それに合わせた仕掛けと餌を投入することになる。そして、周囲の状況などを見ながら釣り方を修正していく。大型を狙う仕掛けでは小型が掛かりにくく、逆に小型狙いの仕掛けでは大型が掛かっても取り込むのは難しい。ゼロイチで大型狙いに徹するか、小型を確実に物にするか、そこは釣り人の楽しみ方によるものとなる。

 

■ 道具と仕掛けの組立

車での釣行ならば、家を出発する前に竿にリールを取り付けて小物類も装填しておいた方が、釣り場に到着してからの立ち上げが楽である。中通し竿の場合には、家でこの段取りをしていかないと現場でワイヤーを通す面倒な作業が必要になる。移動中に穂先へ無理なストレスをかけないよう、トップカバーをしっかり装着し、必ずリールのドラグを緩めておく。

小物類を竿に装着した状態で出発することができない場合は、画像のように小物類一式を短い道糸に通して輪にしておくとよい。釣り場で道具箱を開いて小物類をあれこれ探すのは、風雨が強い時など厄介な作業だからだ。釣りが終わって竿をたたむ時に、小物類を道糸の先端に集め、その上で道糸をカットしてスナップサルカンに結べば画像のような輪ができる。帰宅してからの洗浄も、輪に通したまま簡単に行うことができる。

 

道糸に小物類を装着した後は、竿を伸ばすことになる。道糸の先端に錘かコマセカゴを付けてリールのドラグを緩め、竿の穂先側からガイド方向を合わせて順次伸ばしてゆく。振出部の引き出し方が弱くてもまずいが、あまりに強すぎると仕舞う時に苦労する。竿を引き出す時は、真っ直ぐに引っ張らずに、回転させながら伸ばすとトラブルが起きにくい。

 

納竿時の話になるが、不幸にして仕舞う時に振り出し部がロックして動かなかったら、竿尻を地面に叩きつけるのが唯一最善の方法である。車に積み込める長さだったら、家で乾燥してから竿尻を叩きつければ大抵は何とかなる。接続部に注油するのは間違いで、ますます仕舞い難くなる。プライヤーなどの工具を使って竿を捻るのも、竿本体に傷を付けるだけで仕舞い込む効果は無い。

また、竿を仕舞う時は手で直接竿に力をかけず、タオルなどを介して竿尻方向に叩いた方が安全である。不幸にして穂先付近が折れた場合、手で直接掴んでいると大けがをする危険があるからだ。

 

どのタイプのコマセカゴを使うかは、狙う魚種、仕掛けの種類、コマセと刺餌の種類などによって決まる。オキアミを刺餌にしたカゴ1本釣りならば、最も信頼性の高いのは遠投型ロケットカゴである。刺餌をカゴ内部に収納して投入できることから、竿を強く振ってもオキアミが針から外れることがない。タナに届くまでハリスがループ状であるから、道糸と絡むトラブルもプラカゴやステンカゴよりもはるかに少ない。しかし、タナに到着すると中のコマセが一気に外へ出る構造なので、魚の群れが頻繁に廻ってきている時には良いが、接岸が稀な状況では直ぐにコマセが効かなくなってしまう。このような場合には、コマセが徐々にこぼれ落ちるプラカゴかステンカゴが有利である。ただ、プラカゴとステンカゴはハリスが吹き流しになるため、横風がない時はハリスが道糸やウキと絡みやすいという欠点がある。逆に、横風がある場合には遠投カゴよりもプラカゴやステンカゴの方が絡みにくい。

 

クッションゴムは長さ30~50cmのものを使用するが、銘柄によって伸縮性と強度に大きな違いがある。45cm級のイナダを狙う場合、高級品ならば1.0~1.5mmΦ、普及品ならば2mmΦのゴムクッションが適している。クッションゴムは色彩、光沢、太さ等によって魚に強い警戒心を与える場合がある。黒系が良好だが、細ければ細いほどよいというものではなさそうだ。定格値としては十分に強度のあるクッションゴムでも、両端の熱融着部が劣化していたり、直線部に傷があったりすると簡単に切れてしまう。使用する前に引っ張って確認した方が良い。

 

ハリスを何号にするかは、狙う魚のサイズと仕掛けの強度を勘案して決定する。水温が低くて潮が澄んでいる晩秋などは、細ハリスを使わないと釣果が伸びない。ハリスは銘柄によって価格と強度に大きな差があるので、いろいろ試して自分に合った銘柄を選定するとよい。

ハリスの長さは、通常の場合1ヒロから2ヒロ程度にする。短いハリスはコマセカゴなどの仕掛けと餌の距離が近すぎて魚に警戒心を与える恐れがあるが、刺餌とコマセが同調しやすいので海況と魚種によっては有利な場合もある。

長いハリスの方が魚を警戒心させないので釣果の点では有利だが、2ヒロ以上にすると5.3m長の竿では魚を抜きあげることが出来ないので玉網が必要となる。

最後にウキを装着すれば、セットアップは完了である。ここでもう一度、すべてのスナップサルカンが確実に閉じられているか確認する。特に夜釣りや早朝の薄暗い時間帯での組み立てでは、ヘッドライトを当てて慎重に確認した方がよい。

 

■ カゴサビキ仕掛け

アジ、サバ、イワシなどの小物を狙う場合は、胴付き仕掛けを用いたカゴサビキが有利である。オキアミ刺餌の仕掛けでも釣れないことはないが、小魚にすぐ餌を盗られてしまう。

胴付きカゴサビキには、コマセカゴをサビキ仕掛けの上部に配置する方法と、錘と共に一番下側に配置する方法がある。カゴ釣りの場合には、上側配置にすればコマセが擬餌針の真上から降り注ぐため有利である。ただ、この配置では仕掛けの重量がコマセカゴと錘の2箇所に遠く分散してバランスが悪くなるため、遠投が難しいという欠点がある。

胴付きスタイルではなく、錘無しのサビキ仕掛けを天秤に取り付ける「吹流し方式」がある。遠投性はカゴ1本針と同じであり、サビキに錘が無いので海中を自然な形で漂うという利点がある。この方式の弱点は、サビキ仕掛けが道糸やカゴに絡まりやすいこと、コマセと擬餌針が同調しづらいことである。

 

昼間のカゴサビキでは、市販されているサビキ仕掛けをそのまま使用することができる。アジやイワシの小物狙いなら、枝ス0.6号~0.8号が適している。最適なバケ色はその時によって変わるが、白系(ハゲ皮ないしサバ皮)が万能である。40cm級のサバやソーダを狙うには、枝ス3号程度の沖釣り用サビキ仕掛けを幹糸の真中で半分に切った3本針が使いやすい。枝スが多いと仕掛けが絡みやすく、魚を針から外す時に他の針が手に刺さって危険だからである。

 

夜釣りの場合も、仕掛けの絡み防止のために枝針は3~4本程度がよい。夜釣りでは枝スの太さをあまり気にする必要はなく、アジ狙いでも枝ス2号、幹糸3号程度まで支障ない。

夜釣りのカゴサビキでは、バケの種類で釣果が大きく違ってくる。オーロラ系、夜光系、純白系など、昼間とは異なる目立ちやすいバケが有利であり、最適なバケは釣り場や季節によって変わってくる。アジ狙いの場合、内湾性の黄アジ、回遊性の黒アジや青アジなど各種あって、魚のサイズによっても餌の好みが異なる。サビキ仕掛けで思うように釣果が得られない場合は、針にオキアミなどの餌を付けて試した方がよい。サビキの疑似針は喰わないが、刺餌なら喰うという場合が少なからずあるからだ。

 

■ タナの設定

タナの設定は極めて重要であり、難しいところでもある。回遊魚狙いでのタナは2ヒロ~竿3本程度だが、その日の気象や海況、季節によって大きく変わってくる。同じ日でも、早朝、昼間、夕方ではタナが変わってくる。魚の群れが大きくて活性が高い時にはタナが少々ずれていても食い込むが、群れが小さくて食い渋りの時期にはタナが合っていないと釣果を得るのは難しい。

 

近くに釣れている人がいれば、タナを教えてもらうのが早道である。不慣れな釣り場で周囲の人に聞き辛い場合は、青物狙いであれば取りあえず確率の高い3ヒロ(4.5m)から竿1本程度にウキ止めを設定して、釣りながら徐々にタナを探っていくことになる。

周囲によく釣れている人がいれば、そのウキをよく観察することによって、タナが浅いのか深いのか、おおまかに知ることができる。仕掛けが着水してウキがすぐに立てばタナは浅いし、ウキが立つまで間があったらタナは深いことになる。回遊魚狙いの場合、陽光の弱い朝夕は比較的タナが浅く、晴れている昼間はタナがやや深くなる傾向がある。

 

精通していない釣り場での底物狙いでは、ポイントの水深を知るための作業が必要となる。だいたいの深さを想定してウキ止めを設定し、道糸の先に1号~1.5号程度のステ糸を30cmほど接続して錘を付け投入する。ウキが立つか立たないかで、海底までの水深を測定することができる。この作業でステ糸を使わず道糸に錘を直結すると、不幸にして根掛りした場合に道糸の切断を余儀なくされる。

自立型のウキでは、この作業は不可能である。また、投入時にハリスがウキに絡まったりして沈んでいかない場合や、魚が喰い上げた場合でも、自立型ウキでは認識することができないのでカゴ釣りには不向きである。

 

■ 餌の選択と取り扱い  

回遊魚狙いの場合、通常は刺餌としてオキアミを使用する。しかし、イワシなどの小魚が多い時にはオキアミでは釣果が伸びない。小魚にオキアミをすぐ盗られてしまうのと、活き餌が豊富な海では死んだオキアミなど回遊魚が相手にしないからである。このような状況では、イワシやシラスをイメージさせる擬似針(バケ)が有利である。バケで良好な結果が得られない時は、サビキで小魚を釣り上げて3枚におろし、幅5mm程度の短冊状にした身餌が効果的な場合もある。

一般的に、朝夕の日差しが弱い時間帯や曇りの日は白系のバケが有利で、太陽光線が強い日中はオキアミの方が有利という傾向がある。

 

擬似餌の一種に、土佐カブラ(アジカブラ)と呼ばれるものがある。カブラ針のチモトに小さな鉛の錘があり、錘の穴にハリスを通して結束する。土佐カブラは優れた擬似餌だが、構造的に2号以下の細ハリスでは結束強度を確保するのが難しいという弱点があるので、結束部分はハリスを折り返して2本撚りにするか、極小ビーズ玉と組み合わせて結束するなどの工夫が必要である。

 

オキアミか擬似餌かを問わず、餌の大きさは釣果に大きく影響する。小さな餌の方が食い込みの良い場合もあるが、大きな餌しか食わない場合もある。何種類ものオキアミを持参するのは不経済であるから、状況に合わせて小さなオキアミを2匹房掛けにするとか、大きなオキアミの頭か尻尾を切り取って使うなどの工夫をする。その日の海況をいち早く掌握し対応するのが、釣果を伸ばす最大の秘訣である。

餌の形が不自然だったり、餌の動きが不自然だったりすると喰いが悪くなるという説があるが、これは間違いである。自然界において、捕食者が真っ先に狙うのは不自然な動きをする個体である。このような個体は病気や怪我などで動きが遅く、捕らえやすいからである。ただ、刺餌の形によっては海中に沈んでいく時に回転してハリスなど絡みやすくなる場合がある。

 

餌とコマセは鮮度が重要だが、いかに鮮度の良いものを買ってきても、釣り場での取り扱いが悪ければすぐにダメになってしまう。オキアミとアミコマセは鮮度を維持するために、クーラーボックスから小出しにして使用する。オキアミを針に付けるために手に持つ時間や、オキアミに直射日光を当てる時間はできるだけ短くするよう心がける。

バッカンという合成樹脂製の入れ物にコマセを入れている釣り人が多いが、バッカンは断熱機能がないため、夏場の釣りではコマセが傷みやすく、前述のようにクーラーボックスから小出しにして使うことになる。それならば、最初からバッカンではなく小型のクーラーボックスにコマセを入れた方が賢明である。価格的にみても、釣具屋で買うバッカンよりもホームセンターで買う小型クーラーボックスの方が安価である。

 

 

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