カゴ釣り専科

カゴ釣り用電気ウキの製作

 

2015.11.09更新

夜間のカゴ釣りでは電気ウキを使うが、暗い波間に光るウキが海中に沈む瞬間は、まさに夜釣りの醍醐味とも言える。電気ウキは市販品もあり、市販されている主要部品を購入して製作することもできるが、ウキ本体と発光素子の全てを自作すれば経済的であり、自分に合った好みのウキを実現することができる。

電気ウキの最も重要な性能は夜間視認性であるが、その他にも軽さや飛行安定性など昼間のウキと同様の基本性能が求められる。優れた電気ウキを実現するには、発光素子(LED)とそれを収納するウキトップ部分が軽量であること、発光素子と電池の接触信頼性が高いことの2点が特に重要である。以下に、工作が簡単で信頼性の高い電気ウキの製作方法を紹介する。

 

ウキ本体部の製作

画像は自作電気ウキのトップ部分である。ウキ自体の構造と製作手順は昼間用のハイブリッド発泡ウキと全く同じだが、トップの芯材として株式会社ウメズ製のパールトップパイプ7.0φを使用し、この中に発光素子を収納する。7.0φ芯パイプの全長は、搭載する発光素子の長さを勘案して決めるが、ウキ本体からあまり長く突き出るとトップヘビーになって飛行性能が悪くなる。このパイプはパール色に着色されているが、LED光の透過に問題はなく、光が拡散するメリットがある。長さ50cmのパイプ2本で200数十円と安価であり、大手釣具店や通販などで購入することができる。

パールトップパイプの上端は、シリコンキャップ(先端保護キャップ)を被せて防水する。パイプ外形が7.0φであるから、シリコンキャップは内系6.0φが適合し、これを適度な長さにカットする。シリコンキャップはホームセンターなどで購入することができ、黒色、黄色などもあるが、電気ウキのトップ用には透明のものが適している。

夜明け前後の薄暗い時間帯では電気ウキが見え難くなるが、トップ羽根のサイズを大きくすると、この問題をある程度解消することができる。しかし、大きいトップ羽根は道糸と絡まりやすいなど、トラブルの原因になりやすい。

 

      

 

■LEDの選定

電気ウキの発光素子には超高輝度LEDを使用し、駆動する電池は円筒形のパナソニック製ピン型リチウム電池BR-435(3V)とする。LEDの品種選定にあたっては、素子サイズ、発光色、輝度、Vf (所定印加電圧)、If (所定電流)などの仕様を吟味する必要があるため、規格を明示している部品業者から通販などで購入する。

100円ショップには3V駆動(乾電池2本)のLEDを用いたイルミネーションなどが売られている。これらLEDは輝度が不十で電気ウキ用には使えないが、集魚灯としては利用することが出来る。

 

7φパールトップに収納するため、LEDサイズは3mmが適している。発光色には赤、白、緑、青などがあるが、輝度が高く視認性が良く価格の安い赤色が推奨される。赤色は水中における減衰度が大きいので、ウキの発光が海中の魚に影響を与えることが無い。発光色が白、青、緑色などのLEDは、Vf が3Vより高いものが多いので、規格をよく吟味する必要がある。Vfにはバラツキがあり、3Vぎりぎりの銘柄を使用すると、電源電圧がわずかに低下しただけで光らなくなってしまう。

リチウム電池BR-435は本体外形が35.9mm X 4.2φ、電圧3.0Vである。従って、使用するLEDは駆動電圧3Vで十分な輝度が得られるように、Vf が最大バラツキでも3Vより低い銘柄を選定する。下記は使用可能な超高輝度LED仕様書の一例で、特に重要な項目は Vf と輝度である。

 

 

LEDは軸方向の狭い角度だけに光を放出するので、電気ウキのように横から光を見る場合には「光拡散キャップ」をLEDの頭部に被せる必要があり、このキャップもLED販売業者から入手できる。LEDと同じサイズで白色またはLED発光色と同色のキャップを使用する。

一般的な電気回路でLEDを駆動するには、順方向電流を設計値に固定するための定電流回路または電流制限抵抗器の挿入が必要であるが、駆動電源としてリチウム電池BR-435を使用する場合に限って、これらは不要である。BR-435は内部抵抗が大きくて大電流を供給する能力がないので、LEDを直結しても電流値はあまり大きくならないからだ。

リチウム電池は消耗しても出力電圧があまり低下しないのが特徴ではあるが、Vf の低いLEDを使用すれば電池の寿命末期まで輝度を維持することができる。

 

■発光素子の製作

LED発光素子には、使用中に電池とLEDの電気的接続が確実で、電池を簡単に脱着することのできる構造が求められる。電気ウキの製作が成功するか否かは、発光素子の信頼性にかかっている。以下に製作の手順を説明する。

 

100V電灯線用ビニール電線の端を30mmほど剥き、細い銅線を5~6本ほど束ねて先端をはんだ付けし、これをカットして銅線束を作る。

LEDリードのマイナス電源側(リードの短い方)を根元近くでカットし、予備はんだ付けする。

 

カットしたLEDリードに銅線束をはんだ付けする。

 

熱収縮性の1.5φ夜光パイプを15~20mmにカットし、銅線束をLEDリードの付け根まで夜光パイプで覆う。全ての銅線をパイプ内に入れないと、ショートの原因になる。

 

夜光パイプの外に出ている銅線束を解きほぐし、銅線1本1本をできるだけ均等な間隔でLED側へ折り返す。

銅線が偏っていると、電池の挿入がスムーズでなくなる。

 

夜光パイプの上に、同じ長さの2φ熱収縮チューブを被せる。

 

BR-435のマイナス電極を挿入した状態で熱収縮チューブを加熱すれば、マイナス電源側のソケットが完成する。

電池を差し込んだ状態で加熱しないと、固くて入らなくなる。

 

プラス側電極を製作する。100円ショップなどで売っている裸銅線(0.55φ)を、8ターンほど電池に巻きつけてコイル状にする。

 

コイルの形が崩れないように、コイル端の1ターンめを2ターンめとはんだ付けする。はんだがコイル内側にまで流れ込まないように注意。

 

電池外形が4φなので、3.8φのドライバーかドリル刃にコイルを挿入して、ラジオペンチなどで端を引っ張って締めあげる。その後、電池を挿入してコイルの締めあげ固さを調整する。

 

コイル端をLEDマイナス電極とはんだ付けして完成。実釣時に海水で濡れた手でコイルを触ると銅が酸化して接触が悪くなるので、使用後は6-66又は5-55などを吹き付けて酸化を防止する。

 

発光素子を使用しない時は、電池のマイナス電極に4.0φシリコンキャップを被せて保管し、電気的ショートから保護する。

以上で実用的な「カゴ釣り用電気ウキ」が完成する。このウキを実釣で使用する時は、パールトップ先端を密封する内径6φシリコンキャップ、使用後の電池を保護する4φシリコンキャップなどを釣り場で紛失しないよう注意が必要である。こうした軽いパーツは風が強い時など飛ばされやすく、暗い釣り場ではいったん手元から離すと探し出すのは困難である。このトラブルを防ぐために、予備のシリコンキャップを他の釣り具と一緒にプラスチックケースなどに入れておくとよい。

 

 

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