カゴ釣り入門

 

カゴ釣りという釣法

 

■カゴ釣りの特徴

カゴ釣りという釣法は、ウキ釣りの一種である。同じウキ釣りでも、フカセ釣りではコマセを柄杓で海へ投入するが、カゴ釣りではコマセカゴが仕掛けの一部になっていて、ウキと一緒にコマセと餌を沖合へ投入する。

遠投が可能なこと、コマセが刺餌と自動的に同調することから、陸から回遊魚などの大物を狙うには合理的な釣法といえる。潮通しの良い堤防や地磯から投入すれば、沖釣り(船釣り)や沖磯での釣りに匹敵する釣果が期待できる、安全で経済的な釣法である。

同じ遠投でも、「投げ釣り」では仕掛けが海底まで沈んでしまうのでキスなどの底物しか狙えないが、「カゴ釣り」ではウキを背負っていることから、表層から海底近くまでのタナを幅広く探ることができる。回遊魚を狙う場合は表層に近いタナに浮かべ、マダイやシマアジ狙いなどでは海底近くまで仕掛けを沈める。季節や時間帯で刻一刻と変化する海況に合わせて、狙うタナを自由に変えることができる。

夜釣りでは電気ウキを使用する。暗い波間にボーと漂う電気ウキが、魚が掛かると海に沈んで真っ暗になる。胸がキューンとする一瞬である。

刺餌または擬似餌の1本釣り、刺餌と擬似餌の組み合わせ、あるいはサビキ仕掛けを装着してアジやイワシなどの小物を狙うカゴサビキなど、多彩な仕掛けを楽しむことができる。釣り人の好みや戦略に応じて仕掛けを自在に変えることの出来る、応用範囲の広い釣法である。

 

カゴ釣りは、他の釣法と比較して道具立てが複雑である。投入後は置き竿でウキが沈むのを待つだけなので、フカセ釣りのように実釣での繊細なテクニックは要求されない。その代わり、大型のウキやコマセカゴといった特殊な道具が必要であり、仕掛けを含めた装備の性能が釣果を左右する釣りである。

優れた装備を用意するためには、釣り道具の知識だけではなく、海の自然、魚の生態など幅広い知識が必要とされる。潮流や海洋生物学を学んだり、釣果を改善するために道具を自作したりするのも、カゴ釣りの楽しいところである。

 

カゴ釣りを安全に行い、期待する釣果をあげるには、下記項目への対応が必要とされる。これらはカゴ釣りだけに限定されたものではなく、海釣り全般に共通の事項も多い。

 

(1)重い仕掛けを遠投し、大型回遊魚を取り込むのに必要なパワーを持つ竿とリール。

(2)視認性の優れた大型ウキと、刺餌とコマセを所定のタナまで確実に送り届けるコマセカゴ。

(3)複雑で重い仕掛けを、強風の中でも狙ったポイントへ確実に投入する遠投技術。

(4)魚に警戒心を与えず、大物の取り込みに耐えられる仕掛け。

(5)ターゲットとする魚の生態に関する知識。

(6)潮流・潮汐・海水温など海況に関する知識と、風向・風速・波浪など気象に関する知識。

(7)込み合った釣り場でも周囲の人々と協調し、釣り場の環境に配慮できる公共心。

 

■他の釣法との協調

海釣りに出かけると、近くに異なる釣法の釣り人が居ることが少なくない。フカセ釣り、投げ釣り、ルアー釣りなどを楽しむ人たちである。釣り場によっては、釣法によって釣り座が自然発生的に区別されている所もあるが、そうでない場所もある。

フカセ釣り師からは、コマセの効きが沖目になるので嫌われる。投げ釣り師とルアーマンからは、ウキが潮で横に流されるので嫌われる。しかし、これらはカゴ釣りの特徴そのものであるから、どうしても避けるのは難しい。最初に釣り座を選定する時に、その日の風向きや潮の流れなどを考慮して、できるだけお互いが楽しい時間を持てるよう努めたい。釣法は違っても、海釣りを楽しむ同好の士である。狙う魚や釣果など情報を交換して、偶然の出会いを大切にしたいものである。

 

「カゴ釣り入門」のページで、釣りは「想像と思考の世界」であると書いたが、そのように頭を働かせるにはある程度の基礎知識と実釣経験が必要である。カゴ釣りでは仕掛けを遠投する関係から、魚の動きを足元で見る機会が皆無である。一方、フカセ釣りでは魚と近接した状態でやりとりする。そのような視点から考えると、たまには短竿を持参してカゴ釣りの合間にフカセ釣りを楽しむことをお勧めしたい。

 

■カゴ釣りを始めるには  

カゴ釣りの道具を揃える際に金額の張るのは竿とリールだが、最初から高価なものを購入する必要は無く、安価なものでも堤防でカゴ釣りを楽しむには十分である。とりあえず手持ちの道具を活用して、まずは海へ行ってカゴ釣りに親しんでいただきたい。狙う魚種や釣行場所によって、釣具に要求される性能は違ってくる。ある程度の実釣経験を積めば、必要な道具のレベルは見えてくるものだ。

お金持ちの釣り師が、最初から高額な道具を使うのは決して悪いことではない。ただ、釣り道具に求められる性能や使い勝手を知識として身につけるには、まず手持ちの道具や安価な道具を使っていろいろ苦労したほうが早道である。

 

カゴ釣りに欠かすことのできない大型ウキやコマセカゴは、市販品でも実用に耐えられる製品が出回り始めたので、最初は釣具屋で手頃なものを購入すればよい。

しかし、カゴ釣りの本当の楽しさは、自分の釣りに合った専用のものを自作するところにある。釣り場、対象魚、海況・気象などに合わせて、信頼性が高く使い勝手の良い自作の道具や仕掛けを使えば、より充実したカゴ釣りを楽しむことが出来る。

 

■実釣に臨むには  

どこの釣り場の、どのポイントで、どんな魚を、どんな仕掛けで、どんな餌で、どのタナで、どの時間帯に釣るか。これらを選択する段階で釣果の80%は決まってしまうと言っても過言ではない。カゴ釣りでは、家を出発するまでの計画と準備が釣果の殆どを左右してしまう。

しかしそうは言っても、カゴ釣りに慣れるまではなかなか思うようにいかないものだ。カゴ釣りを横で眺めていると実に簡単そうに見えるが、いざ自分がやってみると多くの問題に直面する。最初のうちは、竿さばきや手返しが上手くいかなかったり、ウキと錘のバランスが上手くなかったり、投入するたびにハリスが絡まったり、期待はずれの釣果だったりすることが少なくない。しかし、そうした経験が次回釣行の糧となり、釣りの技術向上を促すことになる。

 

釣行の際に必要なものは、釣具や仕掛けだけではない。防寒具や雨具、バケツ、タオル、ヘッドランプ、電池などの携行品や、深夜に立ち寄れる釣餌店の情報も必要である。そして、海況、気象、波浪予報などの情報も釣り場の選定や安全確保から欠かす事はできない。せっかく長距離をドライブして釣り場へ辿り着いたのに、波が高かったり風が強かったりして竿が出せないのでは、時間と経費の損失である。これら気象や海釣りの基本的事項については、関連するWebサイトや海釣り入門書などをご参照いただきたい。

 

いかに完璧な段取りで釣行に臨んでも、肝心の魚が廻って来なければ釣果は望めない。同じ場所へ同じ時間に同じ装備で出かけても、日によって釣果には大きな違いが出る。釣りというのは非常にギャンブル性の高い道楽であり、そこがまた釣り人を惹き付ける所以でもあるように思われる。

 

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