カゴ釣り入門

 

カゴ釣りのウキとカゴ

 

遠くからでも見える大型ウキと、コマセを入れて沖合へ投入するカゴは、カゴ釣りだけに必要な特有の道具である。最近では実用に耐えられるものが市販されるようになったので、これらを釣具店で買い求めて気軽にカゴ釣りを始めることができる。また、釣りのシーズンオフなどには自分の釣りに合った好みのウキやカゴを自作するのもカゴ釣りの面白さである。

 

■ウキ

【ウキに要求される性能】

カゴ釣りでは仕掛けを沖合に遠投することから、視認性の良い大型ウキが必要である。込み合っている釣り場では、他の釣り人との道糸絡みを防ぐために、自分のウキだけではなく周囲の釣り人のウキに対しても常に注意が必要である。ウキは本人に見えるだけではダメで、他の釣り人たちにとっても見やすいことが要求される。

 

□良好な視認性

□安定した飛行性

□軽量であること

□強度と耐久性に優れていること

□道糸やハリスが絡みにくいこと

□強風下でも安定に立っていること

□魚が掛かった時の沈み感度と波乗りの良さがバランスしていること

□浅タナの釣りでも魚に警戒心を与えない色であること

  

ウキの形状や重さは、遠投性能に大きく影響する。バランスよく真っ直ぐに飛行する軽いウキが、遠投性の点で優れている。重いウキでは竿の弾性エネルギーがカゴとウキに分散するので、飛距離が落ちてしまう。また、飛びの悪いウキは飛行中にリール側へ吹き戻されるため、深タナ狙いの場合には実効飛距離が落ちてしまう。

ウキTOPは大きいほど視認性に優れ、飛行も安定しているが、頭の大きなウキは強風時に倒れやすい。仕掛けを飛ばす距離と風の強さによって、その日に適したウキを使い分けるのが理想である。また、TOPの形状は道糸やハリス絡みと密接に関係する。

 

ウキの選定で第一優先となるのは浮力である。投入後にウキが安定に立たなかったり、沈んでしまったりしたら釣りにならないからだ。市販のウキでは、錘号数に対応した浮力と内臓錘の号数が本体に表示されている。例えば10-2という表示であれば、浮力が錘10号相当で、フロート本体内部に2号錘が内蔵されていることを示している。

実際のカゴ釣りでウキが背負う物体は錘だけではなく、カゴやコマセなど総重量としてはかなり重くなる。しかし、これらの殆どは比重が水に近いため、錘だけを考慮してウキの浮力を選定しても概ね問題はない。ただ、ステンレス製カゴを使用する場合には錘+2号程度の浮力にした方が良い場合もあるが、一般にウキの浮力表示にはかなりの余裕があり、過剰な浮力はウキの感度を悪くする。一方で、残留浮力の大きいウキは波乗りが良いので、青物狙いでは刺餌が動いて釣果があがるというメリットがある。

 

【市販パーツの組み合わせによる自作ウキ】

カゴ釣り用の大型ウキは、釣具店で販売しているパーツを組み合わせることによって簡単に自作することができる。フロート本体部は発泡中通しウキを使用するが、根元に2号錘を内蔵している場合にはペンチなどで引き出して取り外す。

TOP羽根も出来合いのものを購入するが、最近では各種形状のものが市販されている。

フロート本体部に1.0φのステンレス線を通し、本体上部にビーズ玉を介してTOP羽根を取り付け、その上にビーズ玉を接着する。本体下部には3φアクリルパイプを挿入し、ステン線の下端に足カンの輪を作れば完成である。好みの色で着色すれば、いっそう自作ウキらしくなる。

このように市販パーツを使えば簡単にウキを製作することができるが、部品代がかさむので経済的なメリットはあまりない。

 

【全自作ウキの製作】

TOP羽根とフロート部を全て自作すれば、自分の好みに合った形状と性能のウキを実現することができ、経済的にも有利である。材料は大手釣具店、ホームセンター、100円ショップなどで買い集めることができ、製作するうえで特殊な工具などは必要ない。

TOP羽根の素材として使用可能な樹脂は各種あるが、加工性、価格、接着性、入手し易さなどの点から、硬質塩化ビニールが手頃である。塩ビは高温に弱いが、夏場の車の中に置いた程度では特に問題は生じない。厚さ0.4~0.5mmの透明な塩ビ板が適しており、ホームセンターや100円ショップなどで入手することができる。太陽光の条件によって見やすいTOP羽根の色は異なるが、橙~ピンク~赤系が一般的であり、好みによっては黒色、黄色、緑色なども使用されている。

フロート本体部に使用する材料には、スチロール(PS)を素材にした硬質発泡材と、ポリプロピレン(PP)を素材にした軟質発泡材があり、いずれも釣具店で購入できる。硬質発泡材は加工性が優れているが、価格が高く重いのが欠点である。軟質材は安価軽いのが特徴だが、切削や着色に難点がある。これらの問題を解決するのが、硬質材と軟質材を組み合わせた「ハイブリッド発泡ウキ」であり、製作方法の詳細は「カゴ釣り専科」を参照していただきたい。

いくら性能の良いウキを作っても、すぐに塗装が剥げたり、壊れたりしては実用にならない。ウキには常に大きな機械的ストレスが加わっている。強風下で海面に叩きつけられたり、磯や堤防に落とされたりする時の衝撃は想像以上に激しいものであり、塗装を含めて耐久性の優れた構造が要求される。

いくら性能の良いウキを作っても、すぐに塗装が剥げたり、壊れたりしては実用にならない。ウキには常に大きな機械的ストレスが加わっている。強風下で海面に叩きつけられたり、磯や堤防に落とされたりする時の衝撃は想像以上に激しいものであり、塗装を含めて耐久性の優れた構造が要求される。

 

【ウキTOPの形状】

ウキTOPの風車が回転すると、その音が海中に伝わって魚に警戒心を与えるという説がある。魚の聴覚を司る器官は頭部と側線にあり、海水の微妙な振動も捉えることができると言われるので、この説はあながち無視できるものではないかもしれない。しかし、風車の音に関する説が本当かどうかを検証するのは非常に難しいので、真偽のほどは未確認である。

もし風車の回転音が魚を警戒させるという説が本当だとすれば、普通の気象条件下で使用する場合は画像右のような固定TOPにした方が良いことになり、道糸やハリス絡みも大幅に軽減され、周囲の釣り人との道糸絡みも緩和される。また、ウキを自作する場合には製作が簡単になる。

ウキTOPには3枚羽根と4枚羽根があるが、固定TOPの場合には3枚羽根の方が横からの風切りが良いので強風時に倒れにくい。軽量でもあり、視認性も特に問題はない。

風車が回転しないと、強風下ではウキが倒れやすくなる。強風下でも耐えられる全天候型ウキを目指す場合には、画像左のような回転風車型のTOPが有利である。しかし、このタイプは外形に凹凸があるため、画像中央のように最上部と首の部分に道糸やハリスが絡みやすいという弱点がある。飛行中に道糸が首の部分に絡んでしまうと、着水してからどんなに竿を煽っても外れない。

        

【中通しウキ】

カゴ釣りに通常使用されるウキは足カン付きのものだが、このタイプの弱点はウキの根元にハリスや道糸が絡みやすいことである。込み合う堤防などでの「お祭り」も、多くの場合は画像のようにウキの根元に隣の釣り人の道糸が巻き付いて発生する。

この問題を根本的に解決するのが、画像下のような「中通しウキ」である。道糸がウキ本体の内部を貫通しているため、原理的に絡みが発生することがない。

実釣講座で詳細を述べるが、「お祭り」を回避するには投入した順番を憶えていて、下側に位置する道糸から先に巻き上げる必要がある。足カン付きのウキを使っている場合、上にある道糸を先に巻き上げると、高い確率で下にある道糸と絡んでしまう。この理由は、足カン付きウキでは巻き上げる時に海中へ潜る力が働くためである。水面に浮かせるにはゆっくり巻き上げればよいが、すると今度はコマセカゴや天秤が下側の道糸と絡むことになる。

ところが、中通しウキでは巻き上げ時にウキが水面に浮くため、後から投入して先に巻き上げても「お祭り」する確率は低い。隣の釣り人が仕掛けをいつまでも流していてイライラするという経験は誰にでもあるが、このような場合に中通しウキを使用すれば自分のペースで投入と巻き上げを行うことができる。

釣具店で「発泡中通しウキ」という名称で売られているものは、TOP羽根がないので視認性が悪く、遠投カゴ釣りには不向きである。実用的な中通しウキは、全自作ウキのTOP羽根とフロート本体部に3~4mmΦアクリルパイプを貫通させて製作することができる。

中通しウキを使うとハリスや道糸との絡みが解決されるだけでなく、道糸と一体的であるから飛行性が優れていて遠投に有利である。しかし、道糸との接触抵抗が大きいことから、深タナを狙う場合は仕掛けが沈むのに時間がかかるという欠点がある。

  

【電気ウキ】

往時の夜釣り用ウキと言えば、昼間のウキTOPにケミホタルを装着したスタイルが主流だった。ケミホタルは優れた商品だが、短時間で切り上げる場合でも1本を消費してしまうという経済的な弱点があった。大手電機メーカーからマンガン単三乾電池と豆電球を用いたUFO形の商品が発売されたが、ウキ自体が重いうえに浮力が限定されていた。

やがてLEDを用いたウキが登場したが、初期のLEDは輝度が低くて近距離に投入するフカセ釣り専用だった。遠投カゴ釣り用のウキも発売されたが、必要な輝度を確保するには大電流が必要とされ、これを駆動するために単5アルカリ乾電池2本が用いられたので重かった。しかし、現在はmAの電流でも十分な輝度が得られるLEDとリチウム電池を組み合わせた発光素子や軽量なカゴ釣り用電気ウキが普及した。夜釣りのランニングコストが改善され、遠投が可能で、視認性の良い便利な電気ウキが市販されるようになったことが、カゴ釣りの夜釣りを盛んにさせた大きな要因である

現在では市販の電気ウキを購入すればそのまま使えるが、価格が高いのが欠点である。フロート本体部と発光部を自作すれば自分の好みに合う性能の良いウキを経済的に実現することができる。製作方法の詳細については、「カゴ釣り専科」をご参照いただきたい。

電気ウキの使用に際しては、ウキの光が海中の魚に影響を与えないことが肝要だ。海面に浮かぶ光は通常ではあり得ない光景であるから、魚は警戒して近寄らなくなる。または、電気ウキの光に魚が反応して海面に浮きあがり、餌を喰わないことも起こりえる。色、青色、白色光などは海中での減衰が少ないため、深いタナまで到達してマイナス要因となることがある。電気ウキに使用するLEDは、海中での減衰が大きい赤色が好ましく、輝度はなるべく抑えた方が賢明である。

 

【集魚灯】

電気ウキと並んで夜釣りに使われるのが集魚灯であり、近年はアジや太刀魚の夜釣り用としてすっかり定着した。最もシンプルな集魚灯は25mmケミホタルであり、これを取り付ける為の黒色チューブ2本を挿入すると、魚が発光プランクトンと誤認するような小さい3点発光となる。ケミホタルは電気ウキと同様に短時間で切り上げる場合でも1本を消費してしまうのが欠点だったが、最近は100円ショップで中国製の25mm、35mm、50mm、75mmの発光素子が販売されている。集魚灯に適した25mmタイプは一袋8本入りで108円であるから経済的で、短時間で切り上げる場合でもあまり気にならない。しかし、75mmタイプでも輝度が十分ではないから、日本製のように電気ウキTOPとして遠投するには適していない。

最近は各種発光色を揃えたLED集魚灯が市販されるようになったが、専用電池が高価だったり、機械的な設計余裕度が小さくて発光しなかったりする製品もある。交換用電池は高価な専用品を購入する必要はなく、電池ホルダー内周にテープを巻いて電極の一方を絶縁すれば、100円ショップなどで売られている安価なボタン電池を流用することができる。簡単な構造変更で顧客の利便性が向上するのに、交換電池で儲けようなどと企むのは浅はかである。

集魚灯には使用目的によって二つのタイプがある。第一のタイプは漁火と称されるもので、強力なライトによって小魚を海面に呼び集め、これを捕食するために浮いて来たイカなどを捕獲するのを目的とするものだ。第二のタイプは、魚が発光プランクトンと誤認して寄って来るのを期待するもので、微弱で小さな光でなければこの目的は達成できない。カゴ釣りで使用する集魚灯は第二のタイプであるが、市販品の中には発光輝度が非常に高く、点滅するような銘柄が少なくない。このような集魚灯は魚に警戒心を持たれるので好ましくない。

 

 

■コマセカゴ

【コマセカゴに要求される性能】

「カゴ釣り」と呼ばれる所以となる道具で、コマセを仕掛けの投入ポイントまで運ぶ役割をする。カゴ釣りだけに必要な独特の道具で、ハリス絡みを防ぐために天秤と組み合わせて使われる場合が多い。構造・形状・材料などに工夫をこらした多くの自作品や市販品があり、それぞれ実用化されている。コマセカゴには以下のよう性能が求められる。

□コマセが入れやすいこと

□所定のタナに行き着くまで中のコマセが出ないこと

□タナに到着したらコマセと刺餌が確実に海中へ放出されること

□飛行中の空気抵抗が少なく、海中に沈む抵抗が少ないこと

□リールを巻き上げる時に水の抵抗が少ないこと

□安定した飛行性

□強度と耐久性に優れていること

□道糸やハリスが絡みにくいこと

□魚に警戒心を与えないこと

実用に供されているコマセカゴには、糸網カゴ、ナイロン網カゴ、反転カゴ、ステンレス網カゴ、プラカゴ、遠投カゴ(刺餌を内部に収納)など多くの種類がある。これらのカゴにはそれぞれ一長一短があり、仕掛けを沈めるタナの深さ、狙う魚種、コマセの種類、海況などによって使い分けることになる。糸網カゴやナイロン網カゴは延べ竿での小物釣りに使用され、反転カゴは軽量なのでフカセ釣りに使用されることが多く、これらがカゴ釣りに使われることは少ない。コマセカゴには天秤付きとそうでないものがあるが、天秤付きの方がハリス絡みのトラブルが少ない。

コマセカゴを機能的に大別すると、コマセが少しずつ零れ落ちるステンカゴやプラカゴと、刺餌をカゴ内部に収納して投入し、タナに着くと刺餌とコマセが一気に放出される底抜け型の遠投カゴに分類される。

   

【プラカゴとステンカゴ】

魚の接岸があまり頻繁でない状況では、コマセが少しずつ海中へ出て行くプラカゴ(プラスチック製カゴ)やステンカゴ(ステンレス製カゴ)がコマセ効果持続の点から有利である。これらは市販のカゴに天秤を取り付けて簡単に自作することができ、材料費も安価である。カゴ内部に錘を収納したほうが着水時のカゴへの衝撃が少なく、魚に警戒心を与えない。

このタイプは製作が簡単で扱いやすいが、刺餌をカゴ内部に収納できないのが弱点である。吹き流しタイプのハリスを垂らしたまま竿を振るため、針が地面に絡んだり、刺餌が落ちたりしやすい。また、投入時にハリスが道糸やウキなどと絡みやすい。横風が無い時には道糸とハリスの飛行軌道が同一線上に重なるため、ハリス絡みが顕著に発生する。

その反面、強風時にはハリスが風下へ直線状になびくため、横風ではハリス絡みが起きにくい。また、吹き流しハリスに枝針を出して刺餌や擬似餌を装着することができる利点があり、餌盗りが多い海況では釣果を伸ばすことができる。

 

プラカゴは外筒を回転させることにより、アミコマセの出方を調整することができる。カゴ外径が34mm(L型)31mm(M型)26mm(S型)の3種類が市販されている。容量の大きいL型を使用する釣り人が多いが、コマセ量としてはM型で十分であり、形状が細いので遠投性に優れている。

プラカゴは片方が尖っていて、反対側が丸みを帯びている。遠投性と海中への沈み速度を優先する場合は、尖っている方を天秤の下側にする。リールを巻き上げる時の水圧を少なくするには尖りを上にする。両方の性能を良くするには、プラカゴ1個をつぶして両端が尖ったカゴに改造する。

  

ステンカゴはコマセの塊がむき出しのまま海中に漂うことから、魚へのアピール度が非常に高い。コマセとしてオキアミを使用するか、アミエビを使用するかで、網目の大きさが違ってくる。アミエビを使用する場合でも、網目があまりに細かいものはコマセの出が悪いので避けたほうが良い。

ステンカゴにはコマセの出方を調整する機能が無いので、状況によっては画像のようにカゴ上部にビニールテープを巻き付けて調整する。

このカゴの弱点は、着水時の衝撃で相当量のコマセが海面へ放出されてしまうことである。そのため、表層の小魚を所定のタナまで導いて刺餌を盗られやすい。その反面、イワシなどを浅タナでサビキ釣りする場合には、海面でのコマセ放出が有利に働く。

 

【遠投カゴ】

遠投カゴと呼ばれるものは、カゴ内部に刺餌を収納して投げることができる構造になっている。形状が少しずつ異なる多くの銘柄が市販されており、釣り人たちが工夫を凝らした色々な自作カゴも使われている。

 

      

 

着水してから沈んで行く間は、画像中央左のように水の抵抗でカゴは天秤上部に浮き上がり、下蓋は閉まっている。所定のタナに到達すると、画像中央右のように下蓋だけが落ちて刺餌とコマセが海中へ放出される。コマセを入れるカゴ本体には浮力材が入っているので、海中でこのままの状態を維持することになる。

市販品はどれも錘が天秤と一体不可分になっているが、この構造では異なる錘負荷に変更することが出来ないので、錘の異なる同種カゴを何種類か用意しなければならず不便である。この不合理を解決するには、画像右のようにルアー用のリングで錘と天秤を接続し、錘の着脱変更を容易にすればよい。

遠投カゴは刺餌をカゴ内部に収納して投入するため、餌落ちを気にせず竿を振ることができるので、遠投に有利である。プラカゴやステンカゴの吹き流し方式に比べて、飛行中はハリスがU字型に閉じるので道糸やウキと絡むトラブルも少ない。弱点はコマセが一気に出てしまうことで、魚が頻繁に接岸している時には威力を発揮するが、接岸が稀な海況ではコマセ切れになってしまう。

 

遠投カゴで深タナを狙う場合は、所定のタナに到達するまでカゴからコマセが出ないほうがよい。投入して着水した瞬間、あるいは水中に沈んでいく最中にカゴからコマセが出てしまうと、表層にいる餌盗りを深みまで呼び寄せてしまう上に、肝心のタナに着いた頃にはカゴ内部のコマセ残量が少なくなってしまう。市販品の中にはカゴ外周に大きな孔がある銘柄があり、この欠点を有している。カゴの孔はテープで塞ぐなど改造した方がベターであり、その場合はカゴ上部に小さな空気孔を数個追加する必要がある。また、下蓋と錘が一体になった銘柄があるが、この構造では着水と同時に下蓋が開いてしまうので好ましくない。

コマセの漏洩を試験するには、ウキ止めを装着しないで海底までカゴを落とし、それを巻き上げてみればよい。刺餌とコマセが投入した時の姿のままカゴ内部に納まった状態で戻ってくれば合格である。

  

【2段式遠投カゴ】

上記のように、既存のコマセカゴにはコマセの出方に関して各々の構造に起因する弱点があった。これを解決するために登場したのが、2段式遠投カゴである。

  

      

画像のように、カゴ上部はプラカゴ、下部は底抜け型の遠投カゴという2段構造になっている。下段のコマセは所定のタナに到着すると刺餌と共に一気に放出され、上段のコマセは少しずつ海中へ出て行く構造である。2種類の異なるカゴを併せ持つことにより、其々の長所が引き出せるようになっている。

このカゴの欠点は、形状がやや大きくなってしまうこと、2箇所にコマセを詰めるために手返しが遅くなること、構造が複雑で製作に手間がかかることである。画像はMサイズのプラカゴと樹脂パイプを利用した自作2段カゴで、外径31mmの小型軽量になっている。

  

【カゴの色彩・形状・材料など】

どのタイプのコマセカゴにも共通して言えるが、カゴや錘の外観はできるだけ魚に目立たない色彩が望ましい。コマセカゴは海中に投入する物体の中で最も形状が大きく、光に敏感な魚に警戒心を持たれやすい。大型回遊魚を釣るにはハリスを長くした方が有利だが、これはカゴから餌を遠ざけて警戒心を緩和する効果がある。カゴやステンレス製天秤は黒や青などの艶消し塗装を施すのが理想である。

カゴの最下部に位置する錘は、餌にもっとも近く、上を見ながら警戒する生態を持つ魚には目立つ存在である。暗くて光らない塗装にすると共に、六角錘やナツメ錘のように下側が尖っている形状は海鳥の口ばしを連想させるので避けるようにする。

 

実釣では、カゴや天秤とハリスの絡みが大きな問題となる。ハリス絡みを防ぐには、カゴや天秤に絡みの原因となる突起や隙間を作らないことである。また、長めのクッションゴムを使用してハリスをカゴから遠ざけるのも効果的だ。

コマセカゴは、決して大きなものは必要ない。小さいカゴは空気抵抗も小さく、遠投性に優れている。コマセは少しずつ頻繁に打ち返すのが基本であり、釣果を伸ばすコツである。市販されている遠投カゴは、Sサイズと称するものでもまだ大きくて、コマセの消費量が多過ぎる。市販品を改造するには、カゴ本体の下部をカットして短くするか、カゴ内部に仕切り板を設けるなどの方法がある。

 

コマセカゴやウキを製作する際に注意が必要なのは、素材となる樹脂と接着剤の適合性である。特に、PP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)、PET(ポリエチレンテレフタレート)などには専用の接着剤が必要である。これらをエポキシ系の接着剤などで接合すると、一見接着されているように見えても振動や衝撃で外れてしまう。PPとPEは比重が1.0未満なので、水に浮かぶかどうかで容易に識別することができる(PETは比重が1.4)。

釣具を気温の低い冬季に製作すると、接着剤が十分に機能しないことがある。接着剤そのものは低温でも時間が経てば凝固するが、被接着物との馴染みが悪くて十分な接着力が得られない。このような状態で製作されたウキやカゴは、使用するうちに接着界面に水分が浸入し剥離に至るので注意したい。

 

【市販品の問題点】

遠投カゴは色々なタイプのものが市販されていて、釣具店で購入すれば実釣ですぐに使うことができる商品が出回ってきた。ただ、旧式の銘柄には欠点のあるものも多い。

◆Sタイプと称するものでも容量が大きすぎて、コマセ消費量が多すぎる。

◆カゴ外周に大きな孔が多数あるものは、着水時あるいは海中へ沈んで行く最中にコマセが放出されてしまう。

◆天秤の主軸が金属ではなく折曲がる紐状のものは、着水時にカゴが開いてコマセが放出されてしまう。

◆錘の鉛が光っていたり、下方向に尖っているものは、魚を警戒させる。

◆金型回収費が積算されているとはいえ、材料費数十円のカゴが売価千円ほどというのは高すぎる。

 

市販品が満足できないから自作の楽しさがあるのだと言えないこともないが、カゴ釣り入門者からベテランまで誰でも満足することのできる安くて性能が良くて長持ちする製品を提供するのは釣具メーカーの責務でもある。

 

 

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